お腹減った

8/10
前へ
/10ページ
次へ
 この日も男は只管に待っていた。待てば必ず報われる。彼の身上はこの日も彼を裏切らなかった。  小柄でやや肉感があり、長めの髪をポニーテールにした女性が歩いてきたのだ。離れていて顔は見えないが、そのシルエットを見ただけで十分にそそられる(・・・・・)女性だった。  ウォーキングかはたまた散歩か。  ゆったりとした服装をして、手荷物の類は持っていない事から後者であろうと男は推測した。  何て不用心なんだろう、と男の体は感激に震えた。襲い掛かった途端、きっと彼女は、とてつもなく後悔した表情を見せてくれるだろう。  己の軽率さを呪うような事まであるかもしれない。  その様を思うだけで、彼の興奮は最高潮に達しようとしていた。  あと数メートル。それだけ我慢すれば、あの柔らかそうな肌に存分に刃を突き立てる事ができる。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加