お腹減った

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 水銀灯のおかげで色濃くなった暗闇の中に身を潜め、タイミングを伺う。  多少大胆に見ていても、向こうからはそう見つかるものでは無いのが、夜の公園の素晴らしいところだ。  きっと、彼女も呑気に自分の前を通り過ぎるだろう。  そんな男の思惑を裏切り、女は不意に足を止めた。  周囲を見回しているようだった。 「んー……血の匂いぃぃ……」  うっとりとしたような彼女の呟きに、男はぎくりとする。  昨日と服も違えば風呂にも入った。  匂いなど感じられるはずが無かった。 「んふふー。んー、良い匂いぃぃ」  うっとりした口調は、決して冗談ではなさそうだった。  やがて彼の潜む暗闇の方で顔を止めた。  完全な暗闇で、姿が見えるはずが無かった。だが、彼女の目は確実に男の存在を捕えていた。  視線が合った時、笑ったのだ。始めてる彼女の顔は、喜びに満ち溢れていた。爛々と赤く光る眼。三日月形に開いた口。そしてそこからから覗く鋭い牙。 「みぃつけたぁ」  逃げなくては。  だが、彼女が一瞬早かった。暗闇にめがけて彼女は音もなくとびかかった。  悲鳴を上げようとした男だが、それは叶わなかった。その前に、彼女の牙が、彼の喉笛に喰らい付いていたからだ。  小柄な見た目からは想像できないほどの腕力で、男は身動き一つ取れないまま喉笛を噛み千切られる感覚を味わう事になった。
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