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お腹減った
マンションの五階にある一室では、振井田茉奈が夕飯のメインディッシュに取り掛かろうとしていた。
調理の合間にカーテンをそっと捲って眺める窓の外には、綺麗な満月が浮かんでいた。
「満月か……。気合入れなきゃね」
彼女はそう呟き、室温に戻すために置いておいた肉塊を手に取った。
どっしりとしたそれは、明らかにキロ単位の塊だった。
大きな鉄製の鍋をコンロに置き、暖めた後にその塊を鉄鍋に放り込む。
ジュワァァァと言う音と共に煙が立ち上り、香ばしい匂いが漂った。
「お肉ぅぅぅぅ」
キッチンに飛び込んできたのは、茉奈より少し小柄な女子だった。ゆったりした服を着て、ちょっと癖のある茶色い髪をポニーテールにしている。
彼女は名前を大賀美代と名乗っていた。
幼げに見えるが、正式な年齢は茉奈も知らない。ただ、彼女が怪物であるという事だけは知っている。
三年前のある月夜の晩にばったり出会い、茉奈の方が一目惚れをしてしまった。
以来、二人は同居をして暮らしている。
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