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1日目
早速練習を開始する。
「はじめに」でも書いたが、私はこのチャレンジで、高価な道具をそろえるつもりはない。ついでに言えば、一日に何時間も練習に費やすつもりもない。せいぜい一時間程度と言ったところだろうか。
この時点で、真剣に絵に向き合っておられる方は不快感を覚えるかもしれないが、どうかご容赦願いたい。不愉快に思われた方は、今すぐこのエッセイを閉じることを推奨する。
昨日唐突に絵を描こう、と思い立って、すぐに手元に確保できたのは、シャープペンシルと消しゴムといくつかのペンだけである。芯の柔らかい鉛筆くらいは今度買ってこようと思うが、それまではシャープペンシルで描くことにする。シャープペンで始めるスケッチ入門、という本もあるようだし、そこまで悪いことでもないだろう。
また、教本についても、一応色々と調べてはみたが、どの本が良いのかいまいちわからない。今度本屋に行く機会があったら、その時に見てみようと思う。
はじめから既に問題が山積みなようにも思うが、連続して時間に少しだけでも余裕があるのは本当にこの20日間足らずだけなので、このまま始めることにする。
取り敢えず、一度何も見ずに薔薇の絵を描いてみることにする。
中々ひどい有様である。これが表紙だったら、読もうと思う人はいないだろう。
絶望的なスタートだが、気を取り直して練習してゆきたい。
教本は手に入れていないが、絵の練習法について検索したところによると、やはり絵の上達には、トレースが効果的ということなので、まずは薔薇の写真をトレースするところから始めたいと思う。
pixabayからダウンロードした、下のフリー写真を用いてトレースしてみる。しかし、当然ながら私はトレース台などという上等な道具は持っていないので、スマートフォンに下の画像を表示してから、明るさを最大にした上でタッチパネルを無効化し、その上にルーズリーフを押しつけて描いた。
そうして描いたのが下の絵である。絵の向きは上の写真と違うが、あまり気にしないでもらいたい。
まあ予想通りの仕上がりだ。
私が思うに、絵の巧さというのは、線の取捨選択の巧さである。
外界の事物の輪郭を、全て絵に写すのは不可能だし、逆に輪郭だけを写し取っても良い絵にはならない。実物の中から、絵に落とし込むべき線を見いだし、それを支持体の上に適切に写し取るという作業を経ることによって、絵が生まれるのだと思う。
絵が下手というのはすなわち、上の2手順のうちいずれか、あるいはその両方が拙いということであり、私の場合は勿論後者である。
そういうわけだから、私がいくら紙を写真に押しつけたとしても、一体どの部分を線にすれば良いのか分からない。その結果が上の絵だ。
うまくゆかない原因は分かったが、それをいくら論じたところで絵は上達しない。そこで、写真の代わりに、papercameraというスマートフォンアプリを使って、写真を線画風に加工した画像を使ってトレースしてみることにする。
上が加工した画像、下がそれを使ってトレースした絵だ。写真そのままよりはましになっている。それにはしたってひどい出来ではあるけれども。
そうこうしているうちに夜も更けてきたので、上の線画風の画像を模写して、今日の練習は終わりにしたい。
小学生の方がよっぽど上手だろうな、という感想しか浮かばない(小学生に失礼かも知れない)。特に真ん中の辺りがひどい。
模写をしていると、自分がどこの線を描いたのかよく分からなくなる。どうやら、絵の練習云々の前に、頭の出来を気にかけた方が良いようである。
はじめから分かっていたとはいえ、中々どうして道は険しそうだ。
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