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第三話 揺さぶり
準々決勝7回表の攻撃。俊足の縣山先輩が、ノーアウト一塁と、理想的な形で出塁。
二番バッター生桐先輩。初めて出塁のランナーをスコアリングポジションへ送るべく、送りバントの構え。手堅く一点を獲りに行く。
……と、思いきや、バントの構えからの、ヒッティング! 内野の頭を越え、ライト前に、ポトリとヒット!
七回表の攻撃、わずか二球で、俊足の一・二番コンビで、ノーアウト一塁二塁。
ここで得点できなければ、僕たちの勝利はないだろう。それは相手も分かっているはずだ。
当然、ダブルスチールも読まれている。
三番バッター島上先輩のところで、
ー 『三番・島上くんに代わりまして、森林くん』 ー
が告げられ、ありがたいことに、球場が、一瞬どよめいた。
三回戦で、優勝候補の一角・海東大附属を、代打逆転さよなら満塁ホームランで破った『怪物一年生』的なネームバリューだけは、かなりあるようだ。何事にも、全く注目されることもなく、静か~~~に、僕の高校生活なんて終わって行くんだろうな~っと思っていたのに、ちょっとした『時の人』扱いだ。自分の中では、プレッシャーどころか、ちょっとしたお祭り騒ぎだ♪
一年生との勝負を避けるか? 避けて満塁にしても、次は、エースで四番のオータム先輩。今のこの流れだと、どちらと勝負をしても打ちそうな勢いだ。だったら、相手も三年生バッテリー。意地もあるだろう。僕と勝負だ。
僕が放った海東大学附属戦での一発は、当然相手バッテリーも知っているわけで、ど真ん中のストレートはないだろう。初球ど真ん中に来るとしたら、打ち気に走る僕に、フォークで空振り、プレッシャーを掛けに来るか?
内角・外角、いずれの高めも、軽く当てられて、内野を越すヒットで一点は嫌だろう。
様子見なしのストライク先行で、僕を追い詰めに来るか?
内角・真ん中・外角、いずれも低め。ダブルスチール警戒で、遅い変化球は、なし。コースに逆らわず、素直にバットを……、
ー カキーンッ! ー
外角低めのストレートを、僕はライト線ギリギリに打ち返していた。
ライトがフェンスからのクッションボールを処理している間に、僕は二塁に。ヒットエンドランで、投球モーションと共にスタートを切っていた縣山先輩、生桐先輩は、悠々ホームイン♪
2ー0。
わずか三球で試合が動き出した!
ー 第四話へ、つづく ー
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