第四話 好球必打《こうきゅうひつだ》

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第四話 好球必打《こうきゅうひつだ》

 イケイケッ! ドンドンッ! イケイケッ! ドンッ!  試合の流れが、一気に、こちらへ傾いた。  2点先取、(いま)だノーアウトのまま、ランナー二塁。バッターは四番、オータム・ショー・へイ!   今のこの流れだと、いかにも、一発デカイのを、打ちそうな雰囲気だ! そうなれば、こちらの勢いは、さらに加速する。オータム先輩と、勝負してくれるのか?  でも、ここで、四番、五番、六番と抑えれば、相手としては、こちらの勢いを(くじ)き、好守(こうしゅ)での流れを、攻撃に引き寄せられるはず。何と言っても、今日に関して言えば、打順関係なく、6回表まで、三者凡退のチームなのだから。  とは言え、エースで四番。歩かせてもいいくらいの際どいコースで勝負して来るか? 相手としても、ノーアウトのまま、ここで歩かせると、守備の空気が悪くなるか?  オータム先輩が右打席に入り、バントの構え。僕を確実に三塁に送りたいという意図もあるが、初球の三連打で、相手の警戒具合と、その様子見でもある。  低めに投げて、バントさせて、三塁でタッチアウトを狙って来そうならヒッティングだが~……、 ー ドンッ! ー 「ボール」  外角低め、ボール約一個分ぐらい、ちょっと外だったようだ。  二球目も、バントの構えのまま~……、 ー ドンッ! ー 「ボール」  今度は、内角低めへのカーブ。ボール先行、2ボール。  三球目も、バントの構えのまま~……、投球モーションに入った瞬間ッ!  僕は走ったッ!  と同時に、オータム先輩もヒッティングに切り替え、スイングッ! ー カキーンッ! ー  内角をえぐるようなシュート系の(たま)を、手足の長いオータム先輩が、器用に脇を閉めて、"タマ"を股間でギュッと挟むようなコンパクトなスイングで、二遊間(にゆうかん)に強烈な(たま)をかっ飛ばした!  ピッチャーの投球モーションと同時にスタートを切っていなかったら、僕の"タマ"にも、たまたま、"コカーンッ!"と、"ヒット"していたかもしれないようなライナー(せい)の当たりッ!  好球必打(こうきゅうひつだ)!  僕は三塁を蹴って一気にホームへッ!  クロスプレーになり掛けたが、スライディングッ! 「セーーーフッッッ!!!」  オータム先輩も二塁へ到達ッ!  3ー0ッ!  「よっしゃーーーッ!」  ……なんだけど、オータム先輩が二塁ベース上でガッツポーズをしているかと思いきや、右足首を押さえてうずくまっていたッ! ー 第五話へ、つづく ー
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