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あのやろう、ざまあみろってんだ。 おれが不漁で困ってんのに、てめえだけ抜けがけしてたくさん魚獲って、しかも、いつの間にか色白のいい女までこさえて。 ここは場所が場所だからな、人は来ない。 もし生きていても、潮が満ちて、じきにおだぶつだ。 しかし、外の光がいっこうに見えてこない。 吾郎の家にいる女とちょっと話しに行こうかと下心を抱いていた松五郎が、こんなもんだったかとため息をついた時。 ぴちゃ 襟首に冷たい雫が滴り落ち、松五郎は「ひっ」と声を上げた。 ぴちゃ ぽた ぴちゃ 歩いている間、雫が狙ったように落ちてくる。そしてやけに生臭い。 「何だ、いった――」 松明をかかげて洞窟を見上げた松五郎の目が、見開かれた。 暗い洞窟の天井から、ほのかに白いものが長い髪と細い腕を揺らして上からぶら下がっている。女のようだが、顔が血まみれではっきりしない。 それがじっと松五郎を見据えている。 がたがたと震えだす体に、地の底から湧き出すような声が染み込んでくる。 こんなところで殺生をはたらくと 神様の ばちがあたるよ 女がひとつだけぎらりと光る眼を剥いた。 「ひっ……!!」 甲高い悲鳴を上げながら、松五郎はその場から逃げ出した。
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