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どこかで見た覚えのある、薄暗い天井が目に入る。 「……む……」 ぐらりと目の前が大きく揺れて、じきにおさまった。 「吾郎さま」 傍らには自分を見守ってくれていたらしいしのの、美しい、しかしやけに青白い顔がある。 布団からゆっくりと起き上がる吾郎に「具合はいかがですか」としの。 殴られて傷を負ったのか、頭には布が巻かれていた。少し痛むが、気になるほどでもない。 「平気だ。……そなたが運び出して、手当てを」 「はい。戻られないので洞を探していたら」 指先で傷の程度を確かめていた吾郎は弾かれたようにしのに向き、 「しの、そなた大丈夫か」 「ええ、何も」 「そうではない」 首を振り、しのを悲しげに見た。 「そなたは亡者でありながら海神の神域に入った。本来ならば姿を留めていられないはずだ」 「――何をおっしゃいます」 「お主には水面に映る影がないのだ。気づいていたか」 顔を強張らせて息を呑むしのに、心当たりをたずねた。 「しの。もしやそなたは、あの時の娘ではないのか」 「……」 「その、首筋のほくろには見覚えがある。あのホトケは無残に顔が潰れていたが、そなたであろう」 首を押さえて吾郎を見つめていたしのは目を伏せ、再び吾郎を見つめた。 「確かに私は、あなたがたに引き揚げてもらった者でございます」 「……何と……」 「せめてものお礼をと思い、この姿で参りました。……洞へも、吾郎さまをお救いしたい、私はどうなってもよいからと海神に赦しを請うて入ったのです」 しかし、と、吾郎は困惑を隠さない。
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