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「そなたは涙も流せるのか。……摩訶不思議なことだ」
「……私も、驚いております」
「優しい心根ゆえの奇跡とみた。だがもう、泣かないでくれ」
ゆっくりと布団の上にしのを横たえた吾郎は艶やかな髪を撫で、
「そなたはいつも、おれを助けてくれた。改めて礼を言う」
「吾郎さま……」
「そして今さらだが、そなたが愛しい」
ふたりは見つめ合い、そっと唇を重ねた。
熱を帯びていく体と、冷たいままの体。
それでも触れ合い、体を重ね、互いの思いを通わせることができたのは至福であった。
しかし、その出会いは遅すぎた。
――命あるうちに
吾郎の逞しい体にしがみつくしのは、歓びと哀しみに揺れながら囁く。
あなたとお逢いしとうございました――
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