3人が本棚に入れています
本棚に追加
私の高校には冬の行事にマラソン大会がある。マラソン大会と言っても10キロ程度の距離だが、普段そんな距離を走ったりしないため随分な長距離に感じる。
部活動に勤しんでいる生徒たちはこの行事に燃えていた。個人の名誉と部活動の威厳を賭けた戦場なのだ。しかし、私はそんな戦場とはかけ離れたところに位置している。私はそう、帰宅部なのだ。誰かと争う必要もなく、悠々自適にバイトをして普段を過ごしている。
マラソン大会の時期が近づくと体育の内容は学校の敷地外を周回する走り込みとなる。運動神経は普通な私だけれど、走ることは好きなようで周りがヒーヒー言っている中でも楽しく走っていた。もちろん普段から走っているわけではないので息も切れ切れだが、走っている時の充足感は気持ちが良かった。
もっと楽しく走れるようになりたいと思い、私は放課後やバイト終わりに走り込むようになった。すると順位はぐんぐんと伸びていく。これはとても楽しく、私は上へ上へと目指すようになっていた。
帰宅部の生徒を抜き、文化部の生徒を抜き、運動部の生徒を抜いていく。すると私の前に残っているのは野球部と陸上部の男子だけとなった。その二人は仲が良く、お互いをライバルのように認識していて切磋琢磨しているようだった。その二人は人当たりが良く、私も彼らとは良好な関係を保っていた。
ほとんどの生徒を抜くようになった私の目標は校内ベストテン入りだった。そのためには前を走っている二人も当然抜かなくてはならない。私は日夜走り込んだ。そしてマラソン大会まで残り一ヶ月というところで私は陸上部の男子を追い抜き、クラス一位となった。規定の周回数では物足りなくなり、先生の許可を貰い、ビリの生徒がゴールするまで走り続けていた。私の心はとても満ちていた。
最初のコメントを投稿しよう!