あとがき

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あとがき

 私がこの思い出話を書いたのにはきっかけがある。恩田陸の『夜のピクニック』を読んだからである。ただ長い距離を歩くだけの歩行祭を題材に物語を展開していく話であったが、このマラソン大会のこともあり、思うことがとても有った。  言葉にすれば『走るだけ』のマラソンも様々な想いで満ちている。マラソンを機に目立とうとする者もいれば、親睦を深め合ったりする者もいる。  私はこのマラソン大会で心を支える者がいる心強さを知った。とても有り難く、嬉しい思い出だ。しかし、同時にこうも思った。  本当は勝ちたかった。  友人と走りきった事自体はとてもいい。しかし、私は陸上部の男子を気に留めてやりたかったことを諦めてしまったことには変わりないのである。ここで争うことを選び、全力で戦っていたのならば違う結末もあったのだろう。これに関しては今更ながらに後悔している。いや、『夜のピクニック』という作品によって気付かされたのだ。もしかしたらこの作品に触れなければここまで深く思い出すこともなく、美化していたかもしれない。あの経験は数年を経て私の教訓となったのである。  高校生の時、マラソン大会が行われる前に『夜のピクニック』を読んでおけばよかったなと思うが、あの頃は読書なんてほとんどしていなかったのだから、後の祭りである。  やりたいことは周りの目を気にせず、全力でやったほうが後悔しなくていいよ。
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