1999年、6月

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強い西日が差し込む中庭で、やっと立ち歩く気力の戻った僕は少しだけ日光浴をしていた。夕方になってもまだ肌が汗ばむほど暑くて、これではすぐに熱中症になりそうだと思って、院内に戻ろうとしたところで久住に遭遇した。 「久住、そんなところで何して……」 横顔だったので最初は分からなかったけれど、とても悲痛な表情だった。 わかってしまった。 助けられなかった命があったのだと── 中庭の隅の日陰で、久住は僕を無言で抱き寄せた。 僕より背の高い僕よりイケてる男は、こんな僕を必要としている。 もうすぐ運命の七の月も中盤に差し掛かる、そんな頃だった。
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