1999年、6月

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「患者じゃなくて、友達……つーか好きな人の見舞いに来てる。気持ちには応えてくれなくていいけど、毎日ちょっとでいいから顔は見たいし声も聞きたい」 すごくシンプルで真っ直ぐな告白だった。 昔から通算したら何度目か分からないけど。 「うん」 自信なさげに視線を落とした久住の顔を、僕は下から覗き込んで言った。 「関係性を、変えてもいいかな?」 「何に……」 ピンと来ないでいる久住の耳に手をかけて、少しだけ上向いたところで唇を重ねようとして思い出した。 「あ、でも遊び相手が家にいる奴と付き合うのは悩むな」 「もう別れた」 そう言うなり今度は久住から唇を触れ合わせてきた。 何度も何度も角度を変えて、唇の感触を確かめる。深いキスではなかったけれど、それが逆にとても愛おしかった。 何十回したかもわからなくなって、さすがに歯止めが利かなくなりそうだと感じた僕が止めた。 「今日はここまで!」 思わず悩ましげな息をついた僕に、久住はやわらかな笑顔で返した。 「また明日な」 飛び込んできた嵐は、穏やかに帰って行った。 僕は自分の唇を触る。完全に気持ちが浮かれてしまった。 早く寝て明日になって欲しいと、心底思った。 これではやはり恋煩いだ──
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