1999年、6月

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このところ、思わしくない身体の変化を感じている。 体力が無いのもあいまって、気弱になっているせいかもしれない。 ふとした瞬間に気が滅入る。「副作用ですね」と言われて仕方がないとは思うものの、自分で躁鬱(そううつ)の変化を感じるのが気持ち悪かった。芽衣子が来ても大して相手もしてやれず、塞ぎがちになってしまう。 「俺の回診でーす」 と、久住は空気を読まずに今日もやってきた。 「……」 健康でいることがどれだけ大事か。健康な人を見ると羨ましいのと妬ましい気分になる。精神的には重症だ。 「どうした? 添い寝してやろうか」 「いらねえ」 恋人というには可愛らしくもないし、愛でたい感じでもないし、何より男だし。 なのにこうして突き放すような冷たい態度を取ってしまっても、構わず手など握ってくるようなところに付け込みたくなる。 「……つらい」 思わず当て付けのように弱音をぶつけてしまった。 今の僕には恋人を喜ばせられる話は出来ないし、してやれることもない。 「検査結果は悪くないんだろ」 「良くもなってない」 「そう腐るなよ、なんかしたいこととか無いの?」 そうだな、と窓の外に目を向ける。 夏らしい日差しは、僕とは無関係の世界に見えた。 「生前葬(せいぜんそう)、かな、なんて」 (いた)んでくれる姿を見られるなら、それも悪くない。 冗談半分で言ったつもりだったけれど、久住は真顔でしばらく黙った。 「久住……?」 「わかった」 無神経な発言だったかもしれないと、瞬時に後悔した。 そのまま、するりと手を離して久住は病室を出て行った。
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