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夏海1
「夏海、今度の土曜みんなで飲もうって言ってるんだけど、どうする?」
「夏海はダメだよ。
いつも来ないもんねー。」
大学の学食で一緒にお昼を食べていた広瀬みすずと花房麻里は、南田夏海が答える前に話を始めている。
「そんなのわからないじゃん。
いつもは駄目だけど、今回は大丈夫かもしれないし。」
「門限が9時じゃ無理でしよ。」
「わかんないよ。
門限がなくなったかもしれないじゃん。」
「だったらそう言うでしょ?」
「あの……みすずごめん。
やっぱり行けない。」
「ほらぁ〜。」
麻里は得意げにスパゲティ用のフォークをみすずに向けた。
「言ったでしょ?」
「そうかもしれないけどさ、いつも行かないからって最初から行くか行かないか聞かないのはちょっと感じ悪いじゃん。
聞かれたけど行かなかったってのと、あること自体知らなくて行かなかったのは違うでしょ?」
「まあ、それはそうだけど……。」
「みすず、ありがとう。
でもこれからも多分私は行けないから聞かなくていいよ。
怒ったりしないから。」
「夏海……。」
みすずは複雑そうな表情で夏海を見た。
夏海は某大学の4年生。
みすずと麻里は大学のオリエンテーションの時に話したのがきっかけで、ずっとつるんでいる。
実はオリエンテーションの時に仲良くなったのはみすずと麻里だけではなくて、ここにはいないけど石田奏斗と島田昂輝、岸本勝という男子もいて、今回はそのメンバーでの飲み会のお誘いだった。
「奏斗、夏海に来てほしって言ってたよ。」
「うん。
でも門限は破れないから。」
夏海はうつむく。
「じゃあ今回は無理でも昼間に集まろうよ。」
「昼間から飲むの?」
「まさか!
昼間だったら何しようね。
カラオケ?
ボーリング?」
「結局学校帰りに遊ぶのと同じだね。」
みすずと麻里は楽しそうに話している。
そんな2人を夏海はただぼうっと眺めていた。
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