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コンビニへ入るといつものお兄さんがレジから優しそうな笑顔で「いらっしゃいませ」と言ってくれる。
アキが大して用もないのにコンビニへ行くのは、暇つぶしとこのお兄さんに会いたいから。
店内をゆっくりとまわって結局いつもと同じプリンを手にレジへ行く。
「こんばんは。」
アキがそう話しかけるとお兄さんは微笑んで、
「こんばんは。」
そう応えてくれる。
プリンのバーコードをスキャンして、
「132円です。」
アキが電子マネーをかざして支払いを済ませると、お兄さんはプリンを入れた袋の持ち手をクルクルと絡ませて持ちやすいようにして渡してくれる。
「お兄さんいつも遅くに大変ですね。」
アキがそう言うと、お兄さんは普段は必要な事以外は喋らないアキに驚いたように一瞬目を丸くしたけど、すぐにいつもの優しいほほえみに戻る。
「仕事だから。
それから拓海。」
「え?」
「俺の名前。
君はうちの常連さんだから特別に拓海って呼んでいいよ。
君は?」
「アキ……。」
「アキちゃんか。
可愛い名前だね。」
アキは急な展開に戸惑いながらもプリンの入った袋を受け取った。
「女の子の独り歩きは危ないから気をつけてね。
俺がもっと早くあがれれば送ってくんだけど、今日は遅いから……。」
「大丈夫です。
こんな格好だと遠目からは女だってわからないでしょ?
それに防犯ブザーもスタンガンも持ってるから。」
「それは凄いね。
でも気をつけてね。」
アキは黒いパーカーのフードを目深にかぶって店を出た。
思いがけずにコンビのお兄さん、拓海と会話ができてアキはスキップしたい気持ちを抑えながら下を向いて歩いた。
学習机に座って何やらノートに書き込みをすると、ベッドの上に寝転んでスマホで動画を見たりSNSをやったりして3時頃に就寝する。
これがアキの日常だった。
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