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夏海の仲の良い友達の中で第二外国語でドイツ語をとっているのは夏海と奏斗だけだ。
だからいつも2人並んで授業を受けている。
みんながドイツ語を取らなかった理由は1限だから。
だけど夏海はドイツ語に興味があったし、先生が他の先生よりもユニークなので、1限でもこの先生の授業が受けたかった。
「夏海、この後カフェオレでも飲まない?」
「うん。
いいよ。」
2限には取りたい授業が無かったので空いている。
授業が終わると2人で学校の近くのチェーン店の喫茶店へ行った。
明後日7時から開いているこの店も、まだお昼には早すぎる今の時間はガラガラで、まわりに気兼ねなく会話ができる。
「夏海、俺さ……。」
「うん?」
カフェオレをストローで飲みながら夏海が上目遣いで奏斗を見た。
「俺、夏海が好きなんだ。」
「ゲホッ、ゲホッ」
夏海はカフェオレでむせてしまう。
「大丈夫?」
夏海は涙目になりながらうんうんと首を縦に振る。
「奏斗が、ゲホッ、変な事言うから。」
「変な事って。」
奏斗が不満げに夏海を見る。
「ごめんごめん。
とにかくびっくりして。」
「本気で考えてほしいんだ。
俺と付き合うとか、考えられない?」
「そういうわけじゃないけど……。
だけど無理。」
「どうして?」
奏斗は納得できないと言わんばかりに問い詰める。
「奏斗が嫌いとかそういうんじゃなくて、何だろう……私の問題なの。
今はまだ誰とも付き合えない。
いつになったら付き合えるかもわからないの。
だから他の人を探して。」
「すぐに諦める事なんてできないよ。」
「ごめん。」
夏海はうつむいた。
その日、夏海はノートに今日あった事を一部始終書いた。
自分の気持ちは書かずに事実だけを。
自分が好きな奏斗から告白されて嬉しくない筈がない。
だけど、今はそれよりも大切にしたいものがある。
だから最後に『これでいいんだと思う』とだけ書いた。
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