アキ2

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アキ2

アキは今日もコンビニに来ていた。 今日は拓海の姿は見当たらない。 仕方なくプリンを買って外へ出て歩きだすと、男性とすれ違った。 アキはいつも下を向いて歩くからすれ違った人の顔は見ていないけど、なんとなく気になって振り返ると、そこにいたのは私服を着た拓海だった。 「あっ。」 咄嗟に次の言葉が出ないアキに拓海は、 「今日はいらっしゃいませじゃなくてこんばんはだね。」 と言って微笑みかける。 「ここでちょっと待っててくれる?」 そう言うと拓海はコンビニの中に入っていった。 手には何かの紙とコンビニの袋を持っている。 「そこの公園で少ししゃべらない? あ、今時間ある?」 「うん。 でも聞く順番逆だよ。」 アキは可笑しそうに笑った。 「そうだね。」 つられて拓海も笑う。 「俺、明日と明後日バイト休みだからシフトもらいに行ったんだ。 あそこシフトが出るのが遅くてさ。 いつもギリギリなんだ。」 ベンチに座ってコンビニの袋からペットボトルのコーヒーとお茶を差し出す。 「どっちがいい?」 アキはお茶を指さした。 「はい、どうぞ。」 「ありがとう。 いただきます。」 アキは早速ペットボトルの蓋を開けてお茶を飲む。 「いつも店に来てくれてるのにプリンを買ってるところしか見たことないから何が好きかわからなくてさ。 プリンが好きって事以外ではコーヒーよりはお茶の方が好きだって事を覚えたよ。」 笑う拓海に、 「プリンは嫌いだけどね。」 アキはそう言った。 「えええーー??? 毎日のように買ってるのに?」 「うん。 毎日のように買ってるから嫌いになった。」 「何それ。 じゃああのプリンどうしてるの?」 「さあね。 秘密だよ。」 「もしかして、彼氏とか?」 「私は貢ぐよりも貢がれたい。」 拓海はアキの言い方が可笑しくてハハハと笑った。 「拓海さんは暇なの?」 「なんで?」 「こんなところで喋ってるから。」 「ハハハ、そうか。 暇じゃなきゃ声かけちゃいけなかった?」 「そうじゃないけど……。」 「わざわざアキちゃんが来る時間に合わせて来たのに?」 「やっぱり暇なんじゃん。」 「そうきたか。 じゃあ、俺はアキちゃんに気があるって言ったら?」 「私の事なんて、何も知らないくせに。」 「うん。 何も知らない。 だからコーヒーよりはお茶が好きな事以外の事を少しずつ知りたいんだけど。」 拓海の顔はひやかしなんかじゃなくて、本気だ。 「知らなくていいよ。 何も。 私の事は忘れて。」 「何で? アキちゃんは俺の事嫌い?」 「嫌いじゃない。 けど、今以上の関係になるつもりはない。 一夜限りの遊びだったら付き合ってあげてもいいけど。」 アキはわざと意味ありげに微笑む。 「アキちゃん……。」 「幻滅したでしょ? コーヒーよりお茶が好きな事以外の事教えてあげる。 私はそういう人間だから、深夜に真面目に働く拓海さんとは合わないって事。」 アキはそう言ってから立ち上がると、 「じゃ、コーヒーより好きなお茶、ごちそうさまでした。」 そう言って立ち去っていった。 アキは部屋に戻って机の上に置いたノートを壁に投げつけると、ベッドに突っ伏した。
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