月下の拳士

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俺はこの所、二、三日に一度は夜の散歩に出ている。位置情報を活用したスマホゲームで、モンスターを集めているのだ。 満月の明るい午後十一時頃、いつものサッカー場の前まで来ると、昨日までは居なかった人影があった。何やら踊っているようにも見える。 近付いてみると、どうやら踊りではなく、拳法の練習っぽかった。よく知らないが、太極拳みたいな型をやっている。俺は、モンスター集めの事など忘れて、その型に見入ってしまった。 月明かりの下、強い踏み込みや鋭い突きを操り返す姿は、何やら神々しさすら感じた。 彼が練習を終え、立ち去って行く後ろ姿を見送って、そこで初めて自分が彼を見続けていた事に気付いた。
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