拒否反応

29/36

5247人が本棚に入れています
本棚に追加
/172ページ
「お礼に行かなきゃいけないでしょ?」 「そのバイトの人って川北くんだから、大丈夫だよ」 「そういう問題じゃなくて。とにかく、今度またそんなことがあったら、ちゃんと報告して? お願いだから」 「……わかった」 そう言うと、お母さんは無理に微笑むような表情をつくり、またキッチンへと戻った。換気扇を回し、コンロに火をつける。 「ねぇ、結子」 手を洗いに行こうと、洗面所に足を向けたときだった。野菜をフライパンで炒めながら、お母さんが口を開く。 「なんで倒れたの?」 「ちょっと……気分が悪くなって」 そう言うと、お母さんはしばらく押し黙った。炒め物の音が響き、匂いが漂ってくる。 「もしかして、ケーキが関係ある?」 一瞬、聞き間違いかと思った。お母さんには、ケーキが苦手だということを言った覚えはない。 「ただの貧血だよ」 これ以上話を続けたくなくて、私は洗面所へ急ぐ。そして、そのまま自分の部屋へ向かった。 その日のラジオは、人と動物が心を通わせる物語だった。知らないラジオネームだったし、あまり集中できず、私は途中でラジオを切った。      
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5247人が本棚に入れています
本棚に追加