拒否反応

32/36

5247人が本棚に入れています
本棚に追加
/172ページ
「瀬戸さんって、もしかして将真くんと喧嘩してるの?」 国語科準備室をほうきで掃いていると、廊下の掃除が終わって戻ってきた嶋野さんが声をかけてきた。 「喧嘩……っていうほどじゃないけど」 「急に掃除場所交代しようって言われて、ちょっと気になってたの。私は教室よりこっちのほうが楽だから嬉しいんだけど」 嶋野さんは少し心配そうな顔をしていた。今まで何も追及されなかったけれど、やっぱりおかしいと思ったのだろう。 「あのさ、瀬戸さんて、幼なじみなのに入学したての頃から将真くんを避けてるっていうか、将真くんにだけちょっと態度が違う気がするんだけど……どうして? 覚えてないって言ってたけど、本当は昔、何か……」 「…………」 「それに、将真くんのバイト先で倒れたとき、瀬戸さんが"将ちゃん"って呼んでいた気がして。それに、将真くんも瀬戸さんのこと下の名前で呼んでた。だから、もしかしたら、本当は仲がよかったんじゃないかって思ったの。だったら、早く仲直りしたほうが」 「嶋野さん」 どんどん話を進めている嶋野さんの言葉を遮る。少し大きな声が出てしまった。 「私はべつに、今さら川北くんと仲よくしたいとか思ってないから」 そこで嶋野さんがびくっとしたような表情をしたから、私は一度大きく息を吐く。 「嶋野さんを責めてるわけじゃなくて。嶋野さんから見た川北くんがどれだけ素敵な人かって、ちゃんとわかってる。自分が好きな人に対して、私の態度が冷たいことが引っかかるのかもしれないけど……ごめん」
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5247人が本棚に入れています
本棚に追加