拒否反応

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「ううん……そんなんじゃなくて」 嶋野さんは顔を赤くして手を振った。けれどすぐに、 「でも、そうなのかな……」 と、顔をうつむかせてそうつぶやいた。 「えっとね、直感なんだけど、もしかしたら瀬戸さん、本当は将真くんのこと好きなのかな、なんて思ってたんだ」 「え? 私が? それはないよ」 即座に言うと、嶋野さんはほっとしたような表情をつくった。 「そっか、やっぱり違うか。瀬戸さん、戸崎くんのことが気になってるんだったもんね。図書室にも通ってるし」 そう言われて、川北くんのことはすぐに反応できたのに、戸崎くんに対してだけ否定も肯定もできない自分に気づく。 戸崎くんは、私が嫌がることをしないし、言わない。話していると楽しいし、何より彼の小説は本当におもしろい。 これを沙和に言ったら、『それは恋に決まってる!』と断言されるだろう。 ……でも、 もしかしたら本当にそうなのかもしれない。 「……うん、好きなんだと思う」 小声で言うと、嶋野さんの表情が一気に明るくなった。恋愛の話をすれば友達の証だと言わんばかりに、両手をぎゅっと握ってくる。 「応援するね!」 そう言われてたじたじとうなずいた私は、戸崎くんへの恋心を認めたことにほっとしているような、早まってしまったような、そんなどっちつかずな気持ちになった。    
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