拒否反応

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「それでね、隼人くんは中学のときも前髪が長くて、体育とかで走ったときだけ顔が見えるの。それで女の子たちから歓声が上がったりして……」 帰りのホームルームが終わってからも、嶋野さんは私の方へ振り返って戸崎くんの 情報を惜しみなく教えてくれた。これが善意だからタチが悪い。 私は愛想笑いをして、「そうなんだ」と繰り返す。 「帰るぞ、萌香」 川北くんが嶋野さんの頭をポンと軽く叩いた。私とは目も合わない。まるで私が見えていないかのようだ。だけど私も何も言わなかった。『関わりたくない』と私から言っていたのだし、川北くんも『話しても意味ないね』と言ったんだから。 嶋野さんは、それでもなんだか私たちを心配するような表情をしていた。 「じゃあ帰るね。バイバイ、瀬戸さん」 手を振る嶋野さんに私も手を振り返し、並んで教室を出るふたりの背中を見送った。    
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