拒否反応

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「悪い意味ででしょ? 前に言ったけど、苦手だからそうなっちゃうの」 そうだ、全部、あの絵本を破かれたせい。私の中で川北くんは悪者なんだ。 「その、ひとりにだけ冷たく当たるっていうやつ。それって過剰反応っていうか、意識してます、ってあらわれじゃないの? 気にせずにいられないんでしょ?」 そこで車内が大きくガタンと揺れた。私は前のシートについている手すりを握る。過剰反応になるのは、嫌だから。意識するのは近づかないようにしたいから。気にせずにいられないのではなく、気にしたくないだけ。それは自分を守るためだ。そう、これは――。 「アレルギー物質に過敏になるのと一緒だよ」 「それでも、人間相手だったら違うと思うけどね。ほら、恋と表裏一体だったり」 沙和は納得がいかないような顔でそう言った。 「少女漫画の見すぎ」 私はそんな沙和を小突いて、大あくびをする。 窓の外を見ると、くもり空。雨が降りそうで降らないような、なんともはっきりしない空だった。    
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