破かれた最後のページ

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破かれた最後のページ

それから一週間経った。あの日以降、川北くんとはあいかわらず言葉を交わしていないし、掃除場所も嶋野さんのままだ。 変わったことと言えば、私が毎日図書室へ通うたびに、嶋野さんと沙和がわざわざ廊下まで見送ってくること。嶋野さんはにこにこ、沙和はにやにやしながら。 戸崎くんとの時間は、穏やかで波が立たないから好きだ。川北くんと一緒にいると、必ずと言っていいほど心も態度も乱れていた。だから、このままでいい。この平穏を 取り戻した心のままで、高校生活を落ち着いて過ごしていきたい。 『さて、今夜のお話は、ちょっと不思議でせつないお話。リスナーからの支持も高いラジオネームラスクさんのお話です』 「あ」 ひとりきりの部屋の中、思わず声を出してしまった私は、イヤホンが外れないように位置を整える。今日は水曜日。ベッドに寝転びながら聞いていたため、身体を起こし、ちゃんと録音もされているかスマホを確認した。 オープニングのピアノ曲が流れ、私は再度ベッドに身体をうずめて目を閉じる。現実から離れ、物語の世界に浸りたかったのだ。 『それは、僕が小学校五年生のときのことだった。僕の家の裏には大きな椎の木があり……』 今日はどんな話だろうとわくわくしながら聴いていると、冒頭から妙な違和感を覚えた。
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