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『……箱が埋まっていたのだ。僕はそれを……』
なぜか知っている話だと思った。耳に入ってくる朗読を聴いていると、鼓動がどんどん速くなっていく。
『……ラジコンが入っていた』
「あっ!」
その単語が出たときに、私はさっきよりも大きな声を出してしまった。そのあとも絶え間なく物語は耳に流れ込んでくる。そのひとつひとつは間違いなく、私が目にした文章だった。
「やっぱり……戸崎くんの……小説だ」
あの日図書室で戸崎くんから『見る?』と言って手渡された、あの原稿。
『今日のお話、いかがだったでしょうか。いや、本当にラスクさんの作品は、じんわりと胸に響くお話が多いですね。あ、贔屓しているわけでも、投稿数が少ないわけでもありませんよ。あなたのお話、お待ちしております。それでは皆様、素敵な夜をお過ごしください。また来週』
ピアノ曲が流れ、十五分間があっという間に終わる。
私は、イヤホンをしたままで、スマホを持つ手を下ろした。まだ胸がどきどきしている。
「ラスクさんは……戸崎くんだったんだ」
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