破かれた最後のページ

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図書室へ向かうべく渡り廊下を急いで歩いていると、反対側から川北くんが歩いてきた。横に並んでいるのは、嶋野さんだ。図書室がある棟の一階は学食だから、もしかしたら一緒に食べていたのかもしれない。 「あ、瀬戸さん」 気づいた嶋野さんが、すれ違う前に手を振ってくる。 「もしかして、今から図書室?」 「……うん」 嶋野さんが笑顔で聞いてきて、私は妙に居心地が悪くなる。川北くんがどんな表情をしているのか確かめるのが怖くて、私は不自然に目を逸らした。 早く戸崎くんに確認したくて急いでいたから、少し息が上がっている。考えすぎかもしれないけれど、それがまるで早く戸崎くんに会いたいと思われているような気がして、きまりが悪い。 「すごいね、毎日通ってて」 嶋野さんが、私の恋心を応援するような口調で微笑んだ。 「……すごくはないけど」 悪気のない言葉だけれど、今、嶋野さんと話すのがものすごく嫌だ。早くここから立ち去りたい。いつもは軽くかわせたり相槌を打ったりできるのに、川北くんがそばで聞いているというただそれだけで、変な汗をかいてくる。 「隼人は休みだよ」 そこで川北くんが急に口をはさんできた。戸崎くんの名前はひとつも出してないのに、と思うと同時に、その冷ややかな声にぎくりとする。 「え? そうなの?」 私より先に、嶋野さんが驚いた声を出す。 「知らなかった。風邪とか?」 「うん、熱があるって」
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