破かれた最後のページ

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翌日の昼休み。昨日と同じで戸崎くんは休みのようだ。図書室に来た私は、いつもの席に座り、誰も座っていない斜め前を見る。私は小さくため息をついて、三冊目の戸崎宗敏の小説に目を落とした。 しばらく没頭していた私は、視線を感じ、ふと顔を上げる。 ……え? いつも戸崎くんが座っている場所に、川北くんが座っていた。 混乱した私は、何を言えばいいのかわからず、ぱっとうつむいて小説の続きを読もうとする。けれど、どこまで読んだのか、まるでわからなくなっていた。 「あのさ」 小声なのに、かけられた声に肩を上げてしまう。私は、おずおずと川北くんへと目線を上げた。 「その本読む暇あるなら、松下先生から借りてる短編集を先に読み終えてくれない?あれ、新作だから早く読みたいんだけど」 「…………」 私は返事に窮してしまう。口を開けるも、「だって……」という乾いた音しか出てこなかった。川北くんのことを思い出すから読んでいなかったなんて、怒られそうで言えない。 「隼人のこと、本当に好きなの?」 しばらく私の返事を待っていたようだけど、川北くんはなかなか話し出さない私に業を煮やしたのか、違う質問をしてきた。あまりに唐突な質問だったから、取り乱した私は、思わず「嶋野さんに聞いたの?」と返してしまう。
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