破かれた最後のページ

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***** その日、お母さんと一緒にケーキの受け取りに行った私は、家に戻るとそれをダイニングテーブルに置いた。 『ねぇねぇ、冷蔵庫に入れる前に中見てもいい?』 『お母さんが出しといてあげるから、先に手を洗ってきなさい』 エプロンをつけて、夕食の準備をしようとキッチンに立つお母さん。私は、『はーい』と返事をして、意気揚々と洗面所に向かった。 時計を見ると、夕方四時。今日は土曜日だから、ひとりで出かけていたお父さんももうすぐ帰ってくるだろう。将ちゃんから絵本を受け取る約束をしたのは四時半だから、もう少ししたら家を出て秘密基地へ向かおう。 今日はお父さんとお母さんの結婚記念日。ごちそうと、ケーキと、絵本のプレゼントと、お母さんにねだって買ってもらった赤くてきれいな花。それもテーブルに飾って……。 そんなことを考えながら手を洗っていると、自分のお祝いでもないのに鼻歌がもれた。いつも喧嘩ばかりしていたふたりは、きっと今日仲直りをしてくれる。そう信じて疑うことをしなかった。 そのとき、玄関を開ける音が聞こえた。荒々しい足音がキッチンへと進んでいく。お父さんだ。そう思った私は洗面所から顔を出す。けれど、お父さんは私に気づかずに通り過ぎた。少し、お酒の匂いがした。
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