破かれた最後のページ

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おいしそうなケーキは一瞬で無残な姿になる。イチゴは潰れ、生クリームが飛び散って、プレートはまっぷたつ。まるで自分の心臓と脳みそがそのケーキになったかのように感じた。ぐちゃぐちゃで、苦しくて、何ひとつ元に戻せないような、自分が何を考えているのかわけがわからなくなるような。 『子どもなんて産まなきゃよかっただろう! そのせいで、こんなことになってるんだから!』 お父さんはその日一番大きい声を上げて、テーブルの脚を思いきり蹴った。お父さんは私に背を向けている。だけど私は自分が怒られているような、責められているような気がした。 お父さんの足が生クリームを引きずって、いっそう汚くなる。生クリームとスポンジの甘ったるい匂い、それからイチゴの甘酸っぱい匂いが、部屋中に充満して私の嗅覚を嫌というほど刺激した。ざわざわとした嫌悪感が私の全身を包んでいく。 さっきから聞こえる、"あいつ"や"子ども"。それが自分だとわからないほど、私は幼くなかった。 私がいたから……お父さんとお母さんはいつも喧嘩をしていたの? お母さんへ視線を移すと、見たこともないような顔をして、口元を震わせている。 『もううんざりだわ! 出ていってちょうだい!』 嫌だ! 私は心の中で、強く叫んだ。 お父さんとお母さんを、早く仲直りさせなきゃ。 頭は混乱していたけれど、私がまず思ったのはそれだった。まるで足かせが外れたかのように玄関へ走り、準備していたバッグを手にして勢いよく外へ飛び出す。もつれそうになる足を少しでも速く動かし、不規則な呼吸で秘密基地へと走った。
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