破かれた最後のページ

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『はあっ、はあっ!』 早くしなきゃ、早く、あの絵本をふたりに渡さなきゃ! 靴の中に小石が入ったのだろうか、右足の裏に痛みが走る。顔は涙でびちゃびちゃになっていて、頬にあたる風が冷たい。鼻水を思いきり吸い込み、大きく咳き込んでしまう。それでも、私は足を止めなかった。 早く、早く将ちゃんから絵本を受け取って、それをプレゼントして、そしたら、きっと……。 『将ちゃん!』 公園に入り、一目散に秘密基地に向かった私は、すでに待っていた将ちゃんの姿を見て、駆け寄った。 『結子、なんだその顔、何かあったのか?』 将ちゃんがぎょっとしたような顔をしたけれど、私はそれには答えられなかった。 『はあっ、はあっ……』 両膝に手をあて、肩を上下させながらうつむくと、汗や涙がぽたぽたと顎を伝って落ちていく。私はそれを腕で一気にぬぐって、将ちゃんに向き直った。 『絵本っ! 貸して!』 『あぁ、うん。わかったけど』 怪訝そうな顔をして、リュックサックからノートを取り出した将ちゃん。私はそれを奪うように取って、自分のバッグから色紙とのりを取り出す。ぼこぼこと歪むダンボールの上で、色紙を貼った。"さく・ゆいことしょうちゃん、え・ゆいこ、じ・しょうちゃん"と描かれたその上には、"ことばをとられた王さまとおきさきさま"と書いてある。
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