破かれた最後のページ

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下唇をかんだその次の瞬間、将ちゃんは、奪った絵本をバサバサと乱暴にめくった。そして、私が私を黒く塗りつぶしたページを思いきり破く。 その映像だけがやけにゆっくりと私の目に映った。どうして将ちゃんがそんなことをするのかわからない。充血した目を見開き、将ちゃんの王子様みたいな顔が歪むのと、破かれた部分が草むらにはらりと落ちるのを、ただただ見ていた。 将ちゃんも私も、しばらく何も言わなかった。まるでこの世界に私たちだけしかいないような静けさにぞっとする。頭が真っ白になった私は、ぱくぱくと魚のように口を開いたり閉じたりした。新しい涙がどんどん溢れて頬を伝う。 ……最初から、無駄だったんだ。こんな絵本をつくったところで、仲直りしてもらおうと毎日おまじないをかけたところで、結局意味なんてなかった。何も変わらなかったんだ。 だって、私のせいで……私がいたから……お父さんとお母さんはあんなふうになっちゃったんだから。 破れたページが風で裏返り、私が黒く塗り潰した部分が浮き上がって見える。鼻の奥で、さっきのケーキの匂いがした。甘ったるいその匂いは、大好きだったはずなのに、なぜだか気分が悪くなった。 あの日、将ちゃんが破った絵本を泣きながら握りしめていた私は、どうやって帰ったのだろうか。それから将ちゃんと言葉を交わしたのか、どちらが先に帰ったのかもわからない。 ただ、その日お父さんは家に帰ってこなくて、数日後、離婚が決まったこと。そして、あっという間に、私たちの引っ越しが決まったことだけは、覚えている。     *****  
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