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教室に行くと、川北くんはすでに席に座っていた。けれど、やはり何を言うべきかわからずに、いつものように目を合わさぬまま過ごす。
「ねぇ、やっぱり朝から元気ないように思うんだけど。私に対するつっこみが甘いわ」
お昼を食べているとき、沙和に心配そうに言われたけれど、生理痛だと言ってごまかした。
昼休みには、もう習慣になっている図書室に向かう。読書スペースまで行くと、いつもの場所に戸崎くんが座っていた。
「どーも」
戸崎くんはいつもと変わらない調子で挨拶をしてくれる。
「風邪、もう大丈夫?」
そう聞くと、戸崎くんはやはりふわりと微笑んだ。大丈夫だということなのだろう。
「なんか、毎日会ってたから、いないと不思議な感じがしたよ」
冗談めかして言うと、戸崎くんが小首を傾げる。
「僕が休んでいるときも、ここに来てたの?」
「……うん」
これではなんだか好きな気持ちをほのめかしているみたいだ。でも、全然そんなつもりもないし、戸崎くんもそんなふうには受け止めていないようだった。
彼はいつものように原稿に目を通し、私は読書をはじめる。
あ、そういえば……。
金曜日のことがあってすっかり忘れていたけれど、戸崎くんには聞きたいことがあったんだ。
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