言葉を取られた王様とお妃様

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「ねぇ、戸崎くんて、ラスクさんだったの?」 思い出した途端、気持ちが高ぶって思わず大きな声を出してしまった。一瞬目を丸くしてこちらを見た戸崎くんは"シー"とでも言うように人差し指を口の前で立てる。静かにという意味でなのか、内緒にしてほしいという意味でなのか、どちらだろう。 でも、その落ち着いた微笑みから、なんとなく後者なんだろうと思った。 「この前、読ませてもらった作品がラジオで読まれたからびっくりして」 私は少し身をかがめ、小声で話しかける。 「うん」 「私、ラスクさんのファンなんだ。同じ県に住んでいるってことは知ってたけど、まさかこんなに身近にいるとは思わなかった」 「そう」 「なんかね、恥ずかしいんだけど、ラスクさんの話をラジオで聴いてると、情景が思い浮かんで絵に描いたりもしてたんだよ。最近の、男の子とおばあちゃんの話、あったでしょ。私、あれとっても感動して……」 「ふ」 そこまでひと息に話すと、戸崎くんが小さく笑った。いつから書いているのか、どんなときにあんな素敵な話を思いつくのか、たくさん聞いてみたい。
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