言葉を取られた王様とお妃様

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「うーん、ああいう人って本当にいるんだね。見方によってはおいしいけど、モエモエ、あれ絶対嫌がってる……あ、結子」 私は嶋野さんのところまで行って、先輩を引きはがした。考えるより先に足が動いていたのだ。 「……瀬戸さん」 「友達? 今俺がこの子と話してるんだから、悪いけど邪魔しないでよ」 私は、嶋野さんが教室を出る前に、川北くんと昇降口で待ち合わせているのをいつものように聞いていた。川北くんは戸崎くんと話があって、それが終わってから行くと言っていたのだ。 「彼女から手を離してください。本当に今から人が来るので」 嶋野さんが少しびっくりしたように目を大きくして私を見ている。先輩は納得いかないような顔をしていた。 「傘がないなら私のを使えばいいよ。私、沙和の傘に入れてもらうしバスで帰るから」 私は嶋野さんに自分の傘を差し出した。そして、不機嫌そうに顔を歪めている先輩を睨む。 「ちなみに、今から来るのはこの子の彼氏です。だから、先輩、邪魔しないであげてください」 そう私が言ったとき、すぐうしろから、 「待たせてごめん、萌香」 と声がした。 身長の高い川北くんが、威圧するように先輩を見下ろすと、彼はしぶしぶといった様子で去っていく。
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