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私は声にならない声で悲鳴を上げそうになった。話の流れに沿ってノートをめくっていた手が震える。
この話の元となる絵本は、今ここにある。小一のときにあの場所を引っ越してからずっと、そこの押入れの中……私のそばにあったんだ。それなのに、なんで……。
「なんで……戸崎くんが、これを……?」
そうつぶやく間にも、物語はどんどん進んでいく。勇者は悪い魔法使いからの攻撃にも屈せず、危険な場所をも突破して、命からがらその三つを手に入れる。そして、悪い魔法使いをこらしめ、ついにふたつの言葉を取り戻したのだ。
『王様もお妃様も、互いに"ごめんなさい"と心から謝り、そして勇者に"ありがとう"と言いました。褒美を取らせようとすると、勇者は言いました。"私の名はユイスと言います。だから、もしふたりに子どもがお生まれになったら、この私の名前の一部を入れていただきたい"と』
気づいたら私は泣いていた。嗚咽のような声がもれ出たと思ったら、目から涙が溢れてノートにしみをつくっていた。口を手で覆いながら、片方の手で最後のページをめくる。
そのページは破られた跡があるままだ。この前川北くんに渡された紙を取り出した私は、震える手でそれを重ね合わせ、最後のページを完成させる。
そこには、王様とお妃様と、その間に真っ黒な、悲しいほど真っ黒な……私がいる。
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