言葉を取られた王様とお妃様

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『数年後。すっかり元の明るさを取り戻した国の、花が咲き乱れるお城の中にある、笑い声の絶えない王様とお妃様のお部屋。そこに、ひとつのかわいらしい声が仲間入りしていました。彼女の名前はユイ姫。王様とお妃様の間に生まれた赤ちゃん、ふたりの宝物のようなお姫様です』 ラジオから、エンディングのピアノ曲が流れてきた。 「将ちゃ……」 手に入れられなかった現実、だけど物語はきちんと完成されていたんだ。いつしか、私の絵本を将ちゃんがめちゃくちゃにしたと思い込んでいたけれど、そうじゃなかった。この絵本を台無しにしてしまったのは将ちゃんではなくて、私だったんだ。 あの絵本は最初から、私と将ちゃんふたりのものだったのに。表紙にもちゃんと、ふたりの名前を書いたのに。 涙が、真っ黒に塗られたクレヨンの上に落ちる。 「将ちゃん……」 唇をかみしめて、もう一度その名前を呼んだ。将ちゃんが破いてくれた最後のページ。そこに描かれた"ゆいこひめ"が、真っ黒になりながらも私の手元で笑っているような気がした。
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