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「これ、戸崎くんから預かってきた」
封筒の中身を見た瞬間、川北くんが、「は?」と大きな声を出した。
「あいつ、なんでこれ……。ていうか、どういうつもりだ?」
「それ、私は読んでないよ。でも、前回のは見せてもらった。川北くん、ラジオに小説を投稿してるよね? ラスクさんって、川北くんのことなんでしょ?」
川北くんは、黙ったままで私を見た。じっと見つめたあとで、手元の封筒へと視線を落とし、うなだれるように口を開く。
「……隼人が全部バラしたのか?」
「違う。私が川北くんだって気づいて、戸崎くんに聞きに行ったの」
「気づいた? なんで?」
「一緒につくった絵本の話が流れたから」
そう言うと、視線をまた私へと上げた川北くん。
「なんで……。だって、隼人に言ってたよな、ラジオを聴きだしたのは二年前からだ って。あの話を投稿してラジオで流れたのは、三年近く前で……」
そうか、川北くんは昨日おばあちゃんの家に行っていたから、ラジオを聴いていないんだ。まさか三年も前の自分の作品がリクエストで流れたなんて思わないだろう。だから、私が知る由もないと思っている。
「昨日……ラスクさんの三年前の作品が流れたの」
川北くんは一気に脱力したように、長いため息をつく。それを前に、私は思いきり頭を下げた。
「ごめん」
「…………」
「ごめんなさい」
あの日絵本を先に台無しにしたのは私のほうだったのに、ずっと川北くんのせいにしていた。再会してからも、それを理由に避け続けて、話を聞こうとしなかった。たとえ許してもらえなくても……ちゃんと謝りたい。
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