言葉を取られた王様とお妃様

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少し歩いた住宅街のはずれ、砂場と滑り台しかない小さな公園に着いた私たちは、ベンチに隣同士で座る。 ハンカチで再度目を押さえた私は、ふう、と息を吐き、顔を上げた。そして横にいる川北くんと同じように、砂場の奥の少し曲がった木々を見る。アーチ状になって見えるそれは、人工的なのか自然のものなのかわからない。けれど、たぶん私も川北くんも同じことを思い出しているだろう。 「ふたりでつくった絵本を台無しにされたからとか、そういうことであれを破ったんじゃないよ」 ぽつりと、川北くんのほうから話しだした。私はわずかに彼へと顔を上げる。 「純粋に嫌だったんだ、結子が消されたことが。怖いし、悲しいし、何するんだよ、って思った」 川北くんの横顔はとてもきれいだ。小学一年生だった将ちゃんよりも、ずっと大人になっている。でもあの頃の面影もたしかにあって、少しずつ、彼が川北くんから将ちゃんになっていくような気がした。結子と呼ばれても、私はもう嫌だなんて思わない。 「好きだったんだよ、結子が。あの頃はまだ子どもだったけど、子どもなりに」 そう言って優しい眼差しでこちらを見た彼は、正真正銘私の好きだった王子様の将ちゃんだった。私は、静かにうなずく。 「結子のお父さんとお母さんに何かあったんだろうなって想像はできたし、結子が傷ついてるのも知ってた。でも、あのあとすぐに結子が引っ越すことになっただろ? それを聞いて、あぁ、結子があんなことしたからだ、バチがあたったんだって……子どもっぽいけどそう思った。だから、見送りにも行かなかった。結子のせいだ、って怒ってたんだ」
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