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「いや、それでもうらやましいわ。同じマンション、同じ通学路、同中、イケメン、美女……」
沙和はずっとぶつぶつ言っていて、嶋野さんが「だから、何それー」と楽しそうに笑っている。
私は、再度ちらりと振り返った。将ちゃんと戸崎くんが私に気づき、「おはよ」と不揃いに挨拶をしてくる。
不思議な感じだ。将ちゃんにはさんざん八つ当たりをして、戸崎くんにはそれを陰からおもしろおかしく見られていたかと思うと、ふたりにどんな顔をしていいのかわからない。
けれど、とりあえず笑顔をつくろうと努力する。
「おはよう」
「ぶっ」
笑ったのは戸崎くんだった。そうだろう、おもしろいのだろう。昨日の将ちゃんとのやりとりを聞いたのかどうかは知らないけれど、いずれにしてもやっぱり彼は楽しんでいるのだ。
階段を上るとすぐに戸崎くんの教室がある。彼とはそこで別れて、私は将ちゃんと並んで歩いた。嶋野さんと沙和は、ふたりで楽しそうに話しながらさっさと教室へ向かっていく。
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