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「瀬戸さん、あのあと結局、将真くんと一緒に帰ったの?」
翌日の休み時間、嶋野さんが、私の顔色をうかがうように聞いてきた。
「うん」
「家にも上がったりした?」
「ううん。外でうちの親と数分話しただけだよ」
「そうなんだ」
ただの相槌のようでいて少しほっとしているような顔に見えるのは、きっと気のせいではない。やっぱり、嶋野さんは川北くんに恋愛感情があるのだろうか。こうやって彼のことを話したり聞いたりしてくるのは、彼女なりに私たちの関係を気にしているのかもしれない。
「もしかして、川北くんのこと好きなの?」
聞くと、頬がほんのり桃色に染まり、目が泳ぎだす嶋野さん。周囲を気にしてたじろいでいる。
「うーん、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
少し時間を置いてそう切りだした嶋野さんは、曖昧なことを言った。
「よくわからないんだよね。ただ、守ってくれる頼れる男の子、って感じで、お兄ちゃんみたいに思ってるだけかもしれないし」
「守ってもらってるの? いつも」
「うん、私、中一の終わりごろ、不審者に声をかけられたことがあって……」
私が驚いた顔をすると、嶋野さんは「あ」と声を出し、「怖くてすぐ逃げたし、事件にもならなくて、全然大したことじゃなかったんだけど」と小声でつけ加える。
「でも、一時期怖くてトラウマっぽくなったのと、親に必要以上に心配されたこともあって、それ以来登下校はお隣の将真くんと一緒に、って流れになったんだ」
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