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「…………」
私はノートを閉じ、ダンボールに入っているほかの本と本の間にそれをねじ込んだ。無理やりだったからか、表紙がぐしゃりと歪んだけれど、そんなのはかまわない。こんな絵本のことは、もうどうでもいいし、忘れたかった。
それなのに、嫌な動悸がおさまらない。忘れたいなら捨てればいいのに、なぜかそれができなくて、そんな自分が嫌になる。
大きくなった私は、ちゃんとわかっているんだ。あのとき絵本をちゃんと完成させ て、ふたりに渡していたとしても、現状は変えられなかったのだと。私がどんなに頑 張ってふたりの絵を描いても、おまじないをかけても、きっと離婚はしていたんだと。
でも……。
『絵本を破ったこと、覚えてないですか?』
『ああ、それか』
彼が私の絵本を破ったという事実は変わらない。覚えていたくせに悪びれる様子のなかった川北くんを思い出し、身体の中から言いようのない感情が湧き上がってくる。
私は川北くん――将ちゃんが、私の願い事のために一緒に絵本をつくってくれて、一緒におまじないをかけてくれて、本当に自分の味方なんだって信じきっていた。
だからこそ、彼に裏切られたときのショックがいまだに忘れられないんだ。
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