拒否反応

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「あ、もしかして、今日も隼人に会いに行ったとか?」 会いに行ったわけではない、と反論しようとして口をつぐんだ。戸崎くんがいればいいと思っていたことは間違いないからだ。 川北くんは、腕組みをして一歩私に近づいてきた。私はその場から後退って距離を置く。 「もしかして隼人のこと好きなの?」 「違う」 「でも、気になってる?」 「違うって言ってる。ただ、なんか……合うっていうか」 まごついてしまうのは、この感情が自分自身でもよくわからないからだ。最初は戸崎宗敏の息子と聞いて興味が出た。でも、彼の小説を読ませてもらったときに、作家の息子というフィルターは外れた気がする。彼の小説は好きだけれど、かと言って、 彼自身が好きかと言われたらわからない。ただ"合う"と思ったことはたしかだった。 「合う? シンパシー的な? 世界観を共有できるみたいな?」 少し馬鹿にしたような口調で川北くんが聞いてくる。少しむっとしたけれど、言い返す言葉がとくに見つからない。 「まぁ……」 同じラジオを聴いていたこともそうだし、いつも会話が弾むわけではないけれど、沈黙が苦痛なわけではないし……。 「へぇー……」 川北くんが物珍しそうな顔でうなずいている。なんで私は川北くんにこんなことを話しているのだろうか。
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