拒否反応

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「萌香、今日のことだけど」 「あぁ、うん! よろしくね、取りに行くから」 放課後、また私の前で嶋野さんと川北くんが仲よさそうに話している。 「ちょっと遅くなってもいいなら、俺が届けるんだけど」 「いいよ、いいよ。将真くんの働いてるところ見たいから、お店まで行くよ」 「あんまり見られたくないんだけどな」 「ふふふ」 「それじゃ、お先に」 互いに手を振り合うふたり。川北くんが教室から出ていくのを見ていると、いつの間にか沙和が隣に立っていた。 「モエモエ、今の会話録音してたらちょうだい」 「わっ、沙和ちゃん。びっくりしたー。ていうか、なんで録音?」 振り返った彼女に、 「隣同士に住んでいるからこそ許される会話、寝る前にリピート再生したい……」 とぶつぶつ気持ち悪いことを言っている。 私は、「嶋野さん、無視していいよ」と言って沙和を肘で小突いた。 「ていうか、何を取りに行くの? 話からして、川北くんのバイト先?」 会話をしっかり頭に録音していたらしい沙和は、無遠慮に嶋野さんに質問する。 「うん、そうなの。将真くん、ケーキ屋さんでバイトしててね、今日私のお父さんの誕生日だから、ホールケーキを注文してたの」 「へぇ、じゃあ、それを取りに行くってこと?」 「うん」 そう話している嶋野さんは、なんだかとても嬉しそうだった。ケーキは幸せの象徴だと言わんばかりのその顔に、少し胸やけがしそうだ。
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