拒否反応

9/36

5248人が本棚に入れています
本棚に追加
/172ページ
「瀬戸さんは隼人くんとどんな話をするの?」 「どんなって……小説の話とか」 そう答えると、嶋野さんは「えっ」と声を上げて、もとから丸い目をさらに丸くする。 「そうなんだー。お父さんが作家さんだから、あえて人とそういう話はしないっていうか、苦手なのかと思ってた。私が聞いてもあんまり教えてくれないんだ」 「そうなの? でも……」 戸崎くんの会話を思い出す。そんなに多くを話したわけではないけれど、少なくとも嫌そうにはしていなかった。 「あ、結子少し赤くなってる。怪しい」 私たちにはさまれながら話を聞いていた沙和が、腕組みをしてこちらをちらりと横目で見る。 「違う違う。まだ、そんな」 「あ、"まだ"って言った! 時間の問題だわ。ね? モエモエ」 「ふふ、そうかもしれないね」 ふたりとも、勝手に盛り上がっている。川北くんといい、なんで無理やり恋愛の話にしたがるのだろう。ただ話しただけで好きだのなんだの、くだらない。 そう思っているはずなのに、頬杖をついて窓へと向けた顔は、ほんの少し熱かった。  
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5248人が本棚に入れています
本棚に追加