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秋風が、木々の間を細く通り過ぎていく。そのときの私には、その風が目に見えていたように思う。私と将ちゃんは、その中を秘密基地に向かって歩いていた。
ザクザクと音がするのは、落ち葉をわざと踏んでいるから。途中で落ち葉がこんもりと山になっているところを見つけて、私たちは一目散にそこまで走った。
『アハハ。すごいすごい』
『やわらかいな』
ふたりで落ち葉を踏む感触に夢中になる。永遠と続けられるような気がした。これでもかというくらい落ち葉を散らかしたあとで、私は将ちゃんにたずねる。
『ねぇ、将ちゃん。これって、誰かが掃除して集めてたんだよね?』
『まぁ……でも、今日は風が強いから、どのみち散らばるだろ』
『うん、そうだよね』
そして、ふたりで悪い顔を見合わせてその場を去った。将ちゃんとなら、いたずらも特別な遊びだった。
『そういえばさ、去年の冬は雪が降ったよね?』
『ああ、結子が雪だるまをつくろうとしたけど、小さすぎてすぐ溶けたよな』
話しながら秘密基地のアーチをくぐって中に入った私たちは、ランドセルをその場にどさっと落とす。まるでここがふたりの家だと言うように。
『今年も降るかな? 降ればいいなー』
『俺、降ると思う!』
『私も降ると思う!』
互いに人差し指を立ててそう言うと、将ちゃんが、
『カケにならないだろ』
と笑った。
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