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『絵本、もうすぐできあがるね!』
ランドセルからノートを取り出した私は、最終ページを将ちゃんに見せる。
『あとは、話の続きを将ちゃんが書き終わったら、おしまい』
『いつ渡すんだっけ?』
『あさっての土曜日!』
そう言うと、将ちゃんは眉を曲げた。
『すぐじゃん。絵はもう完成してるんだろ?』
『うん。ほら、王様はお父さん、お妃様はお母さん、あと、このお姫様が私だよ!』
自信満々に絵を自慢する。だって、本当に心を込めて描いたから。今までで一番上手に描けているんだ。
『お母さんと結子の顔、まったく一緒なんだけど』
『違うよ! ほら、お母さんは口紅が赤で、私はピンク。それにリボンもついてる』
『お母さんより自分のほうをかわいく描いたってこと?』
『もう、将ちゃん細かい』
そんなやりとりをしながら、絵本をつくっていく。案の定、色を足したくなって、何度も将ちゃんからノートを戻し、結局その日は最後まで完成しなかった。
『俺が家で完成させるから』
やれやれと頭をかきながら将ちゃんが提案してくれたけれど、私は頬を膨らませる。
『えー、そしたら、毎日かけてる願い事のおまじないがかけられないじゃん』
『俺が代わりにかけてやるから』
すると、将ちゃんが得意げに笑ってそう言った。
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