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『願い事、ちゃんと知ってるの? 頭の中にそれを浮かべて"願いが叶いますように"って唱えないと意味ないんだよ?』
『うん、言おうか? "結子のお父さんとおか……"』
そう言いかけた将ちゃんの口に、私は慌てて手をかざす。
『あぁっ! だめだよ、口に出したら叶わなくなるから。ていうか将ちゃん、なんで知ってるの? もしかして、こっそり聞いてたの?』
『わかるよ、結子のことだから』
将ちゃんが当たり前のように言ってくれたことが嬉しかった。そのとき私は本当にお姫様になれた気がしたのだ。
『将ちゃん、すごいね。明日できあがる?』
『いや、放課後サッカーするし、今日も夜ご飯はばあちゃんたちと外で食べるんだ。だから、当日になるけど、いい? それか、最後だけ結子が文を自分で書く?』
顎をつまみながら考えていた将ちゃんは、私の方を見て首を傾げた。でも、私は子どもながらに妥協したくなかった。
『嫌だ"さく・ゆいことしょうちゃん、え・ゆいこ、じ・しょうちゃん"って、表紙に貼るために色紙に書いちゃったもん。最後まで将ちゃんに書いてもらいたい』
"字"なんて普通の絵本の表紙にはないから変だけど、将ちゃんも『そうだよなぁ』とうなずいていた。私と同じで、最後までやり通したい気持ちがあるように見えた。
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