拒否反応

21/36

5248人が本棚に入れています
本棚に追加
/172ページ
翌日の掃除時間。川北くんは私よりも先に来て、本を整理しながら本棚に戻していた。 「大丈夫かよ」 私の顔をじっと見てから、川北くんがたずねてくる。 「……教室で聞けばいいじゃん」 わかっている、教室で聞いてこなかったのは、私が『関わりたくない』と言ったから。それなのに素直に返事ができない。何も言わずに突っ立っていると、川北くんは予想どおりの返しをした。 「瀬戸に関わりたくないって言われたから、話しかけるといちいち注目されそうなんだよ、周りに」 ため息をつきながら川北くんはまた作業に戻った。 今日も昼休みは図書室に行って、読書と、ほんの少し戸崎くんとおしゃべりをした。そのときは穏やかな気持ちで話せたのに、川北くん相手だとどうしても刺々しい言い 方になってしまう。 「昨日は、あ……」 川北くんと同じように本棚に資料や本を立てかけながら、言いよどむ。お礼を言わなくてはいけないのはわかっているのに、なかなかそのひとことが出てこない。 「……あり……が……」 口をまごつかせていると、川北くんがぶっと噴き出した。 「あれみたいだな、あの絵本」 「…………」 「ほら、魔法使いに"ありがとう"と"ごめんなさい"って言葉を奪われた話」 あの破られた絵本の話を出されて、私は手を止めた。思わず川北くんを見たけれど、彼は変わらず本棚の整理をしている。私があのときどれだけ傷ついたのか、川北くん はわかってないんだ。
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5248人が本棚に入れています
本棚に追加