拒否反応

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「そんなこと……」 「だから、いつまでもつまらない意地張って俺に八つ当たりしてるんだろ?」 その言葉にかっと顔が熱くなって、私はバンッと持っていた本を長机に打ちつけた。川北くんに、私の何がわかるっていうんだ。 「将ちゃんが!」 「俺が何?」 「将ちゃんが絵本を破いたから、お母さんたちに渡せなかったんじゃん!」 私は気づいていなかった。彼を"将ちゃん"と呼んでしまっていることに。ずっと押しとどめていた感情が一気に溢れてくる。あの頃の気持ちを思いきりぶつけるように、私は勢い任せに大声を張り上げた。 「今となっては馬鹿げたことだったってわかるけど、あのときの私は、自分がお母さんとお父さんを仲直りさせられるって信じてたの。毎日おまじないをかけて、それが叶えばいいって本当に思って、一生懸命絵本をつくったのに……」 「それを、俺が邪魔したって?」 「そうだよ。将ちゃんのせいで、全部!」 彼が言ったとおり、これはただの八つ当たりだ。だけどどうしようもない。怒りなのか悲しみなのか、言葉にできない感情で胸がいっぱいになる。 川北くんは何も言わず私を見つめていた。彼の目に今映っている自分の姿を思うと、情けなくなる。それが嫌で、逃げるように国語科準備室を出ていこうとすると、川北 くんに腕をつかまれて身動きがとれなくなった。
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