拒否反応

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「お父さん?」 「なんで父親だと思ったの? 親、って言っただけなのに」 「あ……」 しまった、つい言ってしまった。うしろから川北くんにも見られているような気がして落ち着かない。 「し……嶋野さんに、戸崎くんのお父さんが戸崎宗敏だって聞いて……。でも、ほかには口外してないから」 自分の言葉が言い訳みたいに聞こえる。それはまるで私が戸崎くんに近づいたのが、ミーハー気分からだって思われている気がするからだ。その気持ちがまったくなかっ たと言うと嘘になるけれど、今は純粋に戸崎くんと過ごす図書室でのあの空気感や、彼の小説が好きだと思うのに。 「べつに隠してはいないよ。だから、そんなに気にしなくてもいい」 いつもと変わらない調子で、戸崎くんはそう言った。責めるような口調ではなく、穏やかな口調だ。そのあと頭を軽く触れられたから、顔に一気に熱が集まる。 「ハンカチ届けに来ただけじゃないのか? 自分の掃除場所に戻れば? 隼人」 ふいに、背後からそっけない声が聞こえた。戸崎くんは川北くんのほうを一瞥すると、また静かに笑う。 「そうだね。じゃーね、瀬戸さん」 「うん……」
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